スイカごっこ

スイカとしてゴロゴロ転がる会

トウフ編5手目(全7手)

(前の話はこちら↓)

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(登場キャラクター)

登場キャラクター

 

(夜に鎮座するトウフビル↓)

トウフビル外観

 

トウフ編5手目

 

配置図1

 

スイカは、パイプ掃除マシーンのスイッチを入れた。

パイプ掃除マシーンが、シャワールームの排水管の掃除を始める。排水管の掃除を監視しながらも、スイカはまだガタガタ震えていた。

 

ガタガタスイカ


生クリームが脱衣所に飛んでいたのである。
己から飛び散った生クリームですべって転んで、そこでやっと気づいた。
生クリームを口の周りにべったりつけて帰宅したスイカは、シャワールームに向かうべく跳ねながら移動しているうちに、辺りに生クリームを飛ばしてしまっていたらしい。

 

「タクシーにも生クリームが飛んでいたのでしょうか」
ポツリとつぶやいた。
スイカは、先ほど自分がこのトウフビルに帰ってきたときに利用したタクシー会社に連絡しなければいけない気がした。

 

スイカは、食べてもいない、食べられもしない生クリームを口の周りにべったりつけて帰宅したことを誰にも知られたくなかった。タクシー会社からのクリーニング代の請求がこのトウフビル宛てに来たら、サリーにバレてしまう。バレる前にクリーニング代を払いに行きたい、スイカはそう考えた。

 

詰まるかもしれないからと排水管を掃除し始めたのも、生クリームを排水管に流したことをサリーに知られたくないからだった。そのわりに脱衣所も洗面所もパイプブラシとパイプ掃除マシーンを探すために荒らしてしまっていたが、スイカはそんな細かいことは気にしていなかった。自分からこぼれ落ちた生クリームの処理には全身全霊の神経を使うが、それ以外のことがらはまったく気にしていないスイカだった。

 

そんな感じに、今日のスイカは、大地のようなおおらかさと針の先のような神経の細やかさをなぜか併せて発動していた。W属性発動スイカではあったが、今はそわそわとパイプ掃除マシーンの清掃っぷりを見守ることしかできなかった。


パイプ掃除マシーンには、さまざまなアタッチメントが存在していた。ここトウフビルの掃除マシーンは、サリーの好みにより、チューブの先端に四方八方へと毛が飛びでたブラシがついたタイプのものだった。

四方八方に毛が飛び出たブラシは、しばらく前に排水管に入りこんでスイカからは見えなくなっていた。少し洗浄しては、にゅるにゅると、それ自体が意思を持っているかのようにさらにチューブが排水管に入っていく。排水管の奥深くから洗浄している音が聞こえていた。


いつものスイカだったら、その光景に見とれていたはずだったが、今日のスイカはそれどころではなかった。そわそわしながらパイプ掃除マシーンを見守っていたが、ついに限界突破した。

 

いてもたってもいられなくなったスイカは、パイプ掃除マシーンの作業を見ることを途中で投げ出し、シャワールームから出た。さらにドアを開けっぱなしだった脱衣所をバビョーンと飛びだすと、リビングに戻った。
そして意を決して、きっぱりと宙に向かって断言した。
「連絡をしなくてはなりませぬ!」

 

断言してから気づいた。
スイカは、電話のようなネット通信できるような端末をいっさい所持していなかった。今まで誰かに連絡が必要なときには、いつもサリーにやってもらっていた。
サリーを待たねばタクシー会社に連絡ができない。しかし連絡するところをサリーに見られてはならない。連絡したことを知られてもならない。

スイカはジレンマに陥り、腹痛でも起こしたかのような、雑巾として絞られたかのような、とんでもない顔になった。

 

「おおおおおおおお……! お?」


とんでもない顔から一転して我に返ると、異変に気づいた。床に何かが落ちていた。


「こ、これはいったい!?」


スイカはリビングの床にくしゃくしゃになって落ちていた物に近づいた。


「服……でしょうか? 先ほどまでは落ちていなかったというのに……。むむっ、事件の『かほり』がいたします!」


服が急にリビングに現れたことがいったい何の事件なのか、スイカにもよくわからなかった。スイカはとりあえず手がかりとなる、落ちていた服を調べるべきだと考えた。が、今度はパイプ掃除マシーンの様子が気になりはじめた。

 

「パイプ掃除マシーンの様子を見にいかなくては……!」


誰かが見ていなくても、パイプ掃除マシーンは自動で洗浄を終えるのだが、スイカはなぜだか見守っていなければいけないという使命感に襲われた。

 

というわけで、床に落ちていた謎の手がかりをスイカは身につけた。スイカはスイカなので、手に何かを持つということができない。超能力で常に携帯するのも体力的に無理がある。手がかりを持ち運ぼうとすると、身につけるしかなかったのである。
なぜ持ち運ぼうと思ったのかはスイカにもよくわからない。急にリビングの床に現れた服だから、ちょっとでも目を離すと急に消えてしまいそうな気がしたのかもしれない。

 

スイカは手がかりを着ると、シャワールームに向かおうとした。
だが、体の向きを変えようとしたところで、ビクリと動きを止めた。
窓が視界に入ったからだ。正確には、窓の外の様子が目に映った。
室内も窓の外も暗かったが、動いている何かが見えた。
スイカはハッと息をのんだ。


窓の外に、誰かがいる。

 

配置図2

 

(トウフ編6手目につづく)