スイカごっこ

スイカとしてゴロゴロ転がる会

トウフ編3手目(全7手)

(前の話はこちら↓)

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(登場キャラクター↓)

登場キャラクター

 

(まさかの1階建てビルヂング、トウフビル↓)

トウフビル

 

トウフ編3手目(全7手)

 

配置図


スイカは、流れ出る生暖かいお湯にそのスイカボディを委ねた。
シャワーヘッドから降り注ぐ湯がスイカボディを心地よくたたく。
スイカは、超能力「さいこきねしす」でシャワーのレバーを回した。
今までほとばしっていたお湯が止まった。

 

シャワールームにある姿見に、いつもどおりの一糸まとわぬスイカボディを映してみる。

 

シャワールームスイカ


スイカにくっついていた生クリームはきれいに落ちたようだ。
シャワーシーンなのでそれっぽく描写しようとして失敗に終わったというメタい事情など、当然スイカは気づかぬままシャワールームを出た。

 

スイカは、シャワールームの出入り口に設置された足拭きマット……もとい、全自動温風乾燥機を作動させ、その場で温風に吹かれてそよそよしながら、やるべきことを思い出した。


「排水管を掃除しなくてはいけませぬ!」

 

スイカは思ったことをそのまま口に出した。
掃除しなくてはいけない、というわけではないが、シャワールームに生クリームを流したことなど今までなかったため、詰まったらどうしよう、芋づる式にスイカが生クリームをくっつけて帰宅したことがバレてしまうのでは、という不安がスイカを襲ったのだ。芋づる式バレの不安は、猛烈な掃除欲へと形を変え、スイカを支配した。

 

いろいろあって口の周りに生クリームをべったりつけて帰宅することになったスイカは、食べてもいない生クリームをつまみ食いしたかのような様相を誰にも見られたくなかったし、知られたくもなかった。落ち着きをなくしたそわそわスイカにとって、生クリームが口の周りにべったり事件は自身の信用に関わる大問題なのだった。

 

スイカは、このトウフ星での拠点、トウフビルの排水管の掃除をしたことはなかったが、ほかの星に滞在しているときにサリーと排水管の掃除をしたことはあった。

 

細長いチューブのようなものの先に、四方八方に向いた毛がついているブラシを使った。確かそうだった。

 

「四方八方ブラシです!」

 

スイカはその記憶を頼りに、脱衣所の収納スペースをあさった。

脱衣所の収納スペースをあらかた荒らしても、お目当てのものは見つからなかった。スイカは仕方なく、脱衣所の隣にある洗面所の収納を引き続き荒らした。そして、ようやくお目当ての四方八方ブラシと、それを操るパイプ掃除マシーンを見つけた。

 

「ありました!」


ほっとしたスイカは、ブラシとパイプ掃除マシーンを超能力で運びながら、自分もバビョン、ピヨン、と微妙に跳ねながら移動した。

 

ガタリ

 

どこかで物音がした。スイカが立てた物音ではない。スイカは一瞬ビクリとし、そろそろと音がした方向を振り返ってみた。開けっぱなしにしていた脱衣所のドアの向こうに、暗い室内が見えた。


「サリーさん……では、ない、の、ですか?」


つぶやくように恐る恐る尋ねてから、スイカは思い出した。
さきほど、車の音がしていた。
タクシーらしき物音がしたため、サリーが帰ってきたのかと思い、スイカは慌ててシャワールームに駆け込んだのだった。

しかし、今もなお室内は暗かった。


「……!」


先ほどのタクシーでサリーが降りて帰宅したのなら、部屋が暗いままなのはおかしいのではないか、という考えがスイカを貫いた。


「ど、どろ何やつ!」


スイカは、シーフ的な何かかと思ったが、シーフなのかどうなのかよくわからないと思い直したことがバレバレの問いかけを、暗闇に向かってしてみた。

 

「……」


返事はなかった。

スイカは警戒しながら辺りをうかがってみたが、何も起きない。物音もしない、動くものが視界に入ることもないまま時が経った。
しばらく経つと、スイカは警戒することに飽きてきた。
気のせいだったに違いない、と思い直して、パイプブラシとパイプ掃除マシーンを運ぶ作業に戻った。

 

つるり

 

「!」


超能力を使いながら、微妙に跳ねていたスイカは、突然すべった。その場でつるりと回転し、逆さに床に落ちた。


ぽよん


なぜそんな音がするのかわからない、謎の柔らか音を立ててスイカは転がった。

 

「これは……? まさか!」


スイカはそこまで言うと、ガタガタ震えはじめた。

生クリームが床に落ちていた。

何ということでしょうか……こともあろうに生クリームが、
「こぼれ落ちていたというのですか!」
スイカが考えていたことの後半は、考えるよりも先に口から飛び出した。


そこは、脱衣所の床だった。考えたら当たり前のようにも思えるが、シャワールームまでの道のりをバビョンバビョン無節操に跳ねまくっていたことで、スイカについた生クリームが床に飛んだらしい。


ほかにどこに飛んだのか、スイカには想像もつかなかった。もはや今日のスイカについた生クリームのすべてを把握し処理することは、スイカにとって不可能に近かった。

 

「……!!」
スイカは破滅の足音を聞いた気がした。

 

配置図2

 

(トウフ編4手目につづく)