スイカごっこ

スイカとしてゴロゴロ転がる会

トウフ編2手目(全7手)

(前の話はこちら↓)

www.suika-watermelon.com

 

(登場キャラクター)

登場キャラクター、スイカ、サリー

 

(事件はトウフビルで起きている……?)

トウフビルヂング、豆腐のような四角く白い1階建ての建物

 

トウフ編2手目

配置図、スイカはシャワールーム、サリーは玄関に

 

サリーはトウフビル内の入り口で、ため息をついた。
やっと帰ってこれた。その安堵感からである。

 

窓の外から、衛星の光が入ってきていた。その光を見て、サリーは室内が暗いということに今さら気づいた。すっかり夜が更けている。サリーはため息をもうひとつついた。

 

今日は、サリーと同じくトウフビルで暮らしているスイカも、どこかの何とかというパーティーに招かれて出かけていた。トウフビルの中が暗いのは、スイカがまだ戻ってきていないからだろう。思えば、スイカのほうが早くトウフビルを出発したため、今日はまだ顔も合わせていなかった。そういう日もある。サリーはドアにもたれ、そんなことをぼんやり思った。

 

照明をつけなくてはいけない。
そう思うのだが、体が動かない。疲労感が勝り、かといって玄関先でゴロ寝するのもどうなのかという思いで、そのままそこに立ちつくした。

 

こんなとこで立ちつくしていたら、帰ってきたスイカに見つかってしまう。見つかってイジられて囃したてられてしまう。

スイカに悪質さはなかったが、純粋さはあった。純粋に物珍しがられてしまう。

そんなスイカの、純粋な野次馬根性と純粋なタチの悪さを、いつものサリーだったらまったく気にしないのだが、今日はいつもとは違っていた。いつものサリーとはひと味違っていた。
どこが違うかと言えば、服装だった。

 

玄関でため息をつくサリー

 

今夜サリーが参加していたのは、仮装パーティーだった。

軽い気持ちで知り合いが誘ってくれたパーティーに参加したはいいものの、すべった。


サリーは犬のような見た目をしていた。そんな自分が猫の仮装をしてみたら面白かろうと思い、猫っぽいコスプレをしてパーティーに参加した。

サリーが着たのは、猫耳つきフード、肉球つき手袋&足袋、そういったアイテムが一体化した着ぐるみだった。しかし、ふだんからサリーは犬のような見た目のため、猫の着ぐるみは伝わりにくかったらしい。


パーティーのほかの参加者たちの仮装がサリーの想像を超えていたせいもあった。
自分たちが今いる惑星とその衛星のコスプレをする者、自分の家の精緻なジオラマを着ぐるみにして着る者、この惑星で一番有名な道路、環状8888号線とその下を走る道路を模した立体交差仮装をする者……とにかく本気度がすさまじい仮装のオンパレードで、サリーは仮装の方向性を見誤ったことを思い知った。


パーティー参加者の「いつものサリーとどこが違うの?」「何の仮装?」という問いに対し、己が仮装しているのは猫だということをパーティーのあいだ中ずっと説明し続け、そのたびに「すべってる」と返されつづた。最終的にサリーは、「猫」ではなく、「着ぐるみを着た犬」としてパーティーを生き延びた。

 

パーティーだし、盛りあがればいいだろうとサリーも思うが、あまりに伝わらない仮装を延々やっていたために、「俺はいったいこの仮装の何を面白いと思ったのだろうか」という己に対する懐疑心が芽ばえていた。その懐疑心はサリーをむしばみ、もはや帰ったら一刻も早く着替えたいという欲望に変わった。

 

サリーが参加していた仮装パーティーは、「おうちに帰るまでが仮装パーティー」というスローガンを掲げ、行きも帰りも参加者に仮装を解くことを許さぬ、本気すぎる仮装パーティーだった。そのためサリーは、おうちに帰るまで猫の着ぐるみを着つづけなければならなかった。

 

というわけで、無事トウフビルに帰りついたサリーは、スイカに見つかる前に一刻も早く着替えたかった。入り口でため息をつくことで体力を小回復したサリーは、クローゼットエリアを目指すことにした。

 

スイカとサリーが暮らすトウフ星での拠点、通称「トウフビル」は平屋だった。

1階建ての、びっくりビルヂングだった。そのため、今サリーがいる入り口と同じフロアにクローゼットエリアがあった。

 

サリーがクローゼットエリアに入る前にスイカがトウフビルに戻ってきた場合に備え、歩きながら着ぐるみを脱ぐことにした。早く着ぐるみから脱したい。すべった仮装から脱したい。その思いだけがサリーをつき動かしていた。

 

サリーは、着ぐるみの背中についたジッパーを下ろそうとした。が、着ぐるみがフカフカしているため、なかなか下ろせない。
もがきながら背中ジッパーを下ろそうとして、下ろせたかと思うと転びそうになり、ひとり大混乱していると、フロアのどこかで音がした。


「……?」
ジッパーに手をかけながら、サリーは音に集中した。シャワーを使っているような音だった。

 

(スイカか?)

 

サリーはそう思ったが、次の瞬間、思い直した。
スイカだったら照明をつけているはずだ。

サリーが今いるリビングからは、本来ならシャワールームは見えない。が、今は脱衣所のドアがなぜか開けっ放しになっており、そのためシャワールームのドア付近までが見通せた。


シャワールームの曇りガラスの戸からは、光が漏れていた。灯りがついている。

トウフビルのシャワールームの灯りは、センサーで点灯するようになっていた。誰かがシャワールームを使っているのであれば、点灯していてもおかしくはない。

 

サリーが今までシャワールームの灯りに気づかなかったのは、シャワールームの隣にある、キッチンエリアの入り口についている常夜灯のためだった。辺りが暗くなると自動的に点灯する、夜のあいだ中ついているタイプの常夜灯である。視界の隅に見えているのは、キッチンの入り口の光だと何となくサリーは思い込んでいたのだ。

 

しかし、おかしいのはシャワールームの灯りではない。キッチンの常夜灯でもない。それ以外の灯りだ。スイカだったらシャワールーム以外の照明もつけっぱなしにしているはずだ。サリーはそう考えた。


シャワーを浴びるときに、使っていないほかの部屋の照明を切っておくような経済観念もしくは省エネ概念を、スイカは持ちあわせていなかった。照明をつけたら、だいたいつけっぱなしである。そんないつものスイカを知っているだけに、サリーは警戒した。電気をつけっぱなしにしない、そんなまともなやつはスイカじゃない。

 

今シャワーを使っているコイツは誰だ?

サリーは身構えた。

 

配置図、シャワールームの謎の存在、リビングにサリー

 

(トウフ編3手目につづく)