スイカごっこ

スイカとしてゴロゴロ転がる会

アパート編「手袋」11話(全15話)

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(登場キャラクター↓)

登場キャラクター、サリー、クイス、ロシュ、レファラ、スイカ

 

アパート編「手袋」11話(全15話)

 

401号室

401号室


「何だよ、何を迷ってんだ?」

言い淀んだレファラに、サリーは尋ねた。

「ううん……どういうことかなって。クイスくんがこれを捨てた?」

レファラはまだ迷いつつ、ひとりごとのようにつぶやいた。

「その説が濃厚ですね」
スイカが言い切った。


「濃厚だったか? クイスに言いがかりつけてるだけのような気がしてきた」
言い切ったスイカに対するサリーのツッコミを無視して、レファラは続けた。
「なんでだろ……ああ、そうか……。あ、そういえばさあ、さっきロシュくんが階段上ってたよ」
「お、おう。いきなり話変わったな」


「スイカくん以外の住人が4階より上に上っていくのが珍しかったから、ついエコーロケーションで部屋の中から行先を確認しちゃった。屋上に行ってたみたいだよ。何となく足音が憂鬱そうだったから、あたしもわざわざ部屋から出て声をかけたりしなかったけど。何かあったのかなあ?」
「クイスとケンカ……したのかな、何なのかよくわからねえが、とにかく時間が必要らしい」
「ふうん……。あたし思うんだけどさあ」
「何だよ」

 

レファラはサリーをチラリと見てから、スイカのほうに体を向けて言った。
「スイカくんは水を飲めば動けるんだよね?」
「はい」
レファラは、今度はサリーのほうに体を向けた。
「サリーくんは? サリーくんの主食って何?」
「え、合成肉とか」
「うーん。そうなのよね、お肉はさあ、合成肉というものがあるんだよねえ」


合成肉は、化学的に合成された食用専用の肉である。
この時代では、さまざまな種族の生き物たちが同じ社会で暮らしているため、肉を食べるときには合成肉を食すのが一般的だった。一般的というよりも、天然の肉を食すことは、だいたいの星の法律で禁じられていた。
サリーはもはや遠い先祖である犬とは違う。だから肉以外を食べればいいようなものだったが、その特性は今もなお少しだけ残っていた。そのため、肉食、つまり合成肉を中心にした食生活を送っていた。

 

「それがどうしたんだ?」
「肉食だと合成肉があるからさあ、大っぴらに言えるけど、まだまだ大っぴらに言えない少数派というのはいるわけですよ」
レファラは、テーブルの上のカップをつつきながらそう言った。


「お聞きしていいでしょうか? レファラさんはどういったものを食……」
「お聞きしちゃいけません」
小さいがよく通るいつものレファラの声で、ぴしゃりと言った。
ぴしゃりとシャットアウトされたスイカは、よけいに好奇心がわいたが、理性で何とか抑えようとした。
しかしその葛藤が、顔にもろに出ていた。


奇妙な表情で、好奇心を押さえようと己の中の苦闘を続け悶絶するスイカをよそに、サリーはレファラに言った。

「クイスもそうだってことか」
「わからない、ロシュくんもそうかもしれないし、違うのかも。なんとなくそう思っただけだよ」
レファラはそうつぶやいた。

サリーはわかるようなわからぬような曖昧な表情で、息を吐きだした。

 

そしてスイカは、そんなことにはお構いなしにまだ己の心の中のバトルを続け、とんでもない表情で悶絶していた。

 

(アパート編「手袋」12話につづく)