スイカごっこ

スイカとしてゴロゴロ転がる会

アパート編「手袋」8話(全15話)

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(登場キャラクター↓)

登場キャラクター、サリー、クイス、ロシュ、レファラ、スイカ

 

アパート編「手袋」8話(全15話)

 

101号室

101号室

 

「手袋では……ないとおっしゃる?」
「おう。俺は最初、道に落ちてるとこを離れたとこからチラッと見ただけで手に取ってはいなかったんで、気づかなかったんだけどよ」


サリーの部屋で、スイカは放心していた。この落とし物が、手袋でないなら何だというのだ。
そう思ったので、スイカは直接聞いてみた。
「では……それはいったい何なのでしょうか? サリーさんが今まさに手に持っているそれは、手袋でないならいったい何なのでしょう」
「いや……うーん。ハッキリは言えねえけど……こういう手袋もあるのかなとは思う。こういう手袋を使う種族もいるのかなとか」
「は……はい」
奥歯にものがはさまったような、微妙な言い回しをするサリーを、スイカは見守った。


「においがよ、違うんだよな」
「におい……ですか?」
「おう。最初から、手のにおいじゃない、とは思ってたんだけどよ。手とか足のにおいではねえなって。新品の手袋なのかとも思ったけど、これは……いや、どうだろう、違うのかも」
「は、はあ」


「うーん。あまり断言するとまた外すからなあ……。自信あるジャンルで勘を外す恥ずかしさ、おまえにわかるかスイカ」
「恥ずかしいのはわかります。わかりますが、それを恐れていてもどうにもなりますまい」
「そうだけど。いや、わかった。持ち主に聞けばいいんだ」
スイカはハッとした。

「持ち主っ」


「おう、誰の物かはわかってんだろ? これが何なのかはわからなくても、誰のもんなのかくらいは」
「まだわかっておりませぬ!」
「マジかよ! おっそ!」
やけにハッキリと言い切ったスイカに対し、半ば反射的になのであろう、サリーは叫んだ。


「つっても俺とオマエを除いたら3人だろ? 3『人』というか、3『者』というか、3『名』というか」

アパート星には人は1人もいないのに『3人』という数え方をするという、言葉の難しさともどかしさを感じながら、サリーはスイカに確認した。


「はい……あ、そうでした、レファラさんは違うそうです。レファラさんご本人が否定なさいました。手袋はされないそうです」
「だと残り2名。ロシュかクイスか……誰も嘘をついていなければだけど……って、いや違う。この落とし物が手袋じゃなかった場合、手袋を落としたかどうか聞いても意味ねえ」


「それもそうですね……ハッ、そうでした。ロシュさんとクイスさんは修羅場になっていてですね。わたくし2人きりにしてよかったのかどうか、少々懸念がございまして」
「修羅場? ケンカでもしてたのか?」
「はい……いえ、レファラさんは修羅場ではないのではとおっしゃっていたのですが、私には判断がつきませぬゆえ」
「なんだそりゃ。まあいいか、んじゃ様子見に行くか。アイツらどこにいるんだ? どっちかの部屋か?」
「お二方が今も一緒にいるとしたら、クイスさんの部屋だと思います」
そんなわけで、サリーとスイカの2名は、クイスの部屋を訪ねるべく2階を目指した。

 

201号室

201号室


ドアをノックしようとした手を、サリーは途中で止めた。
「……これ、ひょっとして俺らが邪魔ものになるやつか? あいつら勝手にケンカして勝手に仲直りしてて、もう今入ってったら馬に蹴られる感じの」
「馬」
スイカは思わずサリーの言葉を繰り返した。
犬のような見た目のサリーが、馬のような何者かに蹴られる場面を想像したのであろう。


「いや、馬みたいな知り合いは今のところいねえけどよ」
「においでわかりませぬか? 中にいるのが1名なのかどうか」
「いや……わかるかもしれねえが、人んちのにおいをクンクン嗅ぐんじゃありませんってオカンが言ってた」
そう言うと、ばかばかしくなったのか、今度は躊躇せずサリーはドアをノックした。

 

返事はなかった。
「……」
サリーとスイカは顔を見合わせた。


もう一度、サリーはドアをノックした。今度はやや乱暴に。
「……ロシュ?」
中から、こちらに問いかけるようなクイスの声が聞こえた。ロシュは中にいないようだ。


「俺だ、サリーだ。スイカもいる。どうした?」
「どうもしない。ごめん、今は俺をほっといて……」
クイスの語尾がぼやけた。泣いているのかもしれない。

 

「……どうしましょう」
「うーん……無理に押し入るわけにもいかねえしな……。ロシュの部屋に先に行ってみるか……」

「はい……」
クイスにドアを開けてもらえない以上、ここでゴリ押すことをあきらめた。

サリーとスイカは、3階のロシュの部屋に行くために階段を上った。

 

(アパート編「手袋」9話につづく)