スイカごっこ

スイカとしてゴロゴロ転がる会

アパート編「手袋」7話(全15話)

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(登場キャラクター↓)

登場キャラクター、サリー、クイス、ロシュ、レファラ、スイカ

 

アパート編「手袋」7話(全15話)

 

501号室

501号室


ロシュに手袋のことを聞く前に、サリーに手袋を探してもらうのが先だと判断したスイカは、4階のレファラの部屋から出ると、5階の自室に戻った。


スイカは、なりゆきで最上階に住んでいた。
といっても建物自体は6階建てで、アパートの真の最上階は空き部屋になっていた。
しかし、腐っても最上階……もとい、準最上階。以前に、上り下りがスイカの身にはあまりにも過酷すぎて、スイカが階段の途中で行き倒れたことがあった。
その際サリーが、スイカの部屋から直接1階に滑りおりられる脱出シュートを取りつけた。


そもそもきついのは階段を上るときだし、1階に住んでいるサリーと部屋を交換すればいいだけの話ではあるのだが、脱出シュートを好きな時に降りられるという誘惑に、スイカは勝てなかった。

 

アパート星のアパートには非常用の装置は何もなかったが、アパートの住人たちは、緊急の事態が起きたとしても、各自の能力で脱出だけはできた。例えばスイカであれば、自室の窓から外へ飛び出しても、謎のスイカの皮がそのスイカボディをキッチリ守り、ケガひとつしないだろう。

つまり、「脱出シュート」と名前がついていても、非常用でも何でもない単なる滑り台なのだった。そういった意味の装置ではないのだが、スイカにとってこの脱出シュートは、とても大切なものだった。


そんな脱出シュートを、スイカは使うことにした。


脱出シュートはスイカの部屋である501号室と101号室、つまりサリーの部屋をつないでいた。
滑りおりる前にすることは特にない。自分が寝ているときや、部屋にいないときでも下りてきていいとサリーは言っていた。
スイカは、部屋の窓付近に取りつけられた脱出シュートにいそいそと近寄り、バビョーンと飛びあがった。そしてそのまま脱出シュートに入り、滑りおりた。

 

101号室

101号室


501号室の窓から建物の外を通り、101号室の室内に窓から入るように、脱出シュートは作られていた。
そのルートどおりに脱出シュート内を滑りおり、脱出シュートから出て101号室内に入ってもなお、そのままの勢いでスイカはゴロゴロ転がった。


スイカは途中で楽しくなってしまい、キャッキャと笑い始めていた。笑いながらサリーの部屋の壁に取りつけられたクッションにぶつかって、止まった。


そんなスイカの様子を、サリーはドン引きした顔で見ていた。
「おう。なんでオマエ、1人で笑ってんの?」
ドン引きな顔のままでサリーはスイカに尋ねた。
スイカは人ではないから「1人」という言い方はおかしいのだが、ついそういう表現をしてしまうくらい、サリーにとっては奇妙な光景だったということなのだろう。

 

スイカはサリーのそんな疑問を、そのスイカボディと同じく、つるりとした態度でスルーした。

「おお、サリーさん! もう作業はおしまいですか? 実はサリーさんに頼みたいことがございまして」
「ん? なんだ? 手袋か?」
「はい、そうです。手袋をですね」
「俺が拾っといてやったぞ」
「えっ」


サリーは、横にあった作業台に置かれていた物を手に取った。
「おお! それです! なぜ私が頼みたいことが分かったのでしょう、サリーさん」
「俺の部屋の玄関に落ちてた。オマエ、俺の部屋出る前にこれ落としてっただろ」
「!! ほぁぁっ!!」
奇妙な声を出しながら、スイカが驚愕した。


「んでよ、俺これ拾って、初めて間近で見たんだけどよ」
「は、はい。ななな何でしょう?」
驚きと恥辱でプルプルガクガクしながらスイカは尋ねた。

そんな無理やりひねり出したスイカの言葉に、サリーはためらいながら答えた。
「これ……、手袋じゃねえ……と、思う」

 

(アパート編「手袋」8話につづく)