スイカごっこ

スイカとしてゴロゴロ転がる会

アパート編「手袋」6話(全15話)

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(登場キャラクター↓)

登場キャラクター、サリー、クイス、ロシュ、レファラ、スイカ

 

アパート編「手袋」6話(全15話)

 

401号室

401号室

 

レファラは、水のカップをスイカに勧めてから言った。


「失せ物探しが得意なのって、本来あたしとかロシュくんより、サリーくんなんだよね。サリーくんに頼んだほうが早いかも」
「サリーさんは嗅覚が大変鋭い方ですからね。たまに鼻が詰まっていらっしゃるようですが」
なぜかスイカがドヤ顔でサリーの自慢をした。


そんなスイカを見て、レファラはふわりと笑った。
「何でスイカくんがドヤ顔してるの」
ニコニコしながら、そう言った。
そして水を飲もうとしたスイカを、止めた。

 

「あ、ゴメンちょっと待って。そうだった、サリーくんからスイカくんが好きなもの聞いて、買ってきた物があったんだった。このあいだ買いだしに行ったときに」
そう言うと、レファラは戸棚から植物用栄養剤『プラッパ』のビンを取りだした。
「そ、それは……! わたくしの贅沢、心のオアシス、『プラッパ』ではありませぬか!」
「うん。薄めるんだよね? そのままだと濃すぎるから」


レファラは『プラッパ』を別のビンに入れ、薄めたあと、スイカに勧めた。

自分と違う種族の、好物や忌避するものを完全には把握できなくとも、知ったからには用意しようというのがレファラの方針らしい。

「で、ではありがたく頂戴いたします」
そう言うと、スイカはビンに付属していたストローで『プラッパ』を、ちゅーちゅー飲みはじめた。

 

早くもスイカは、何だか元気が出てきた様子だった。
イスの中でその球形の体をやや上向きにすると、言った。
「そうですね、レファラさんのおっしゃるように、サリーさんに頼んでみます。手袋を探してほしいと」
「うん、それがいいかも」
レファラは笑顔でうなずいた。

 

まだ笑顔が残る顔で、レファラは続けた。
「アパート星にはアパートしかない」
「はい」
「というのは半分嘘でさ、本当はあるよね、もう1か所みんなが知ってる場所」
「もう1か所というと、宇宙ポート……でしょうか」


「そう。その『プラッパ』もそうだけどさあ、日常に必要なものとかは、やっぱりあって。でもアパート星にはアパートしかないから、宇宙船でほかの星へ買いだしに行ったりする」
スイカを見ているような、そうでもないようなレファラの目が、部屋の間接照明を反射して、やわらかく光った。


「んでもさあ、それだけじゃなくて……あたしはアパートの部屋にじっとしてるのがさあ……」
レファラは座っていたイスの背にもたれ、天井を向いて息をふうっと吐きだした。
「アパート編、早く終わらないかな……。いつもみたいに宇宙船に乗って、お得意さんたちと取引したりさあ、『次はどこに行こうかなあ』とか、宇宙船のナビを聞きながら次に行く場所のこと考えたりする、そういう日常に早く戻りたい」
レファラは商人だ。宇宙船を店として使っている。

 

「……」

スイカはとんでもなくメタい発言を聞いた気がして、しばし息を止めた。
しかし息を止めたからと言って、レファラのメタ発言がなかったことにはならなかった。
「スイカくん、早く手袋見つけてよ」
「は、はい。それはもう。はい」
なぜかスイカが焦っていた。

 

「あ、落ちてたっていう手袋、あたしのじゃないよ。あたしはカギづめがあるから、手袋しないんだ。手の甲を覆う物なら持ってるけど」
そう言ってレファラは自分の手をスイカに近づけた。


なるほど言う通り、先がとがった、全体に曲がっている細い爪が指の先についていた。
細いといっても、サリーの爪よりも長く、そして強く曲がっていた。


「普通の手袋だと破けちゃうのよね。それにもともと、あたしたちの種族は手袋をする文化がないし」
「なるほどそうでしたか。レファラさんの手袋ではないということはわかりました。ご協力ありがとうございます」


レファラに礼を言ってその場を辞そうとして、スイカは思いだした。
ロシュの手袋の可能性があるかどうかを、本人に聞くことを忘れていた。

 

(アパート編「手袋」7話につづく)