スイカごっこ

スイカとしてゴロゴロ転がる会

アパート編「手袋」4話(全15話)

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(登場キャラクター↓)

登場キャラクター、サリー、クイス、ロシュ、レファラ、スイカ

 

アパート編「手袋」4話(全15話)

 

階段

2階踊り場


「大丈夫? スイカ」
3階から続く、アパートの内階段を下りながら、ロシュがスイカに尋ねた。
アパートの前に落ちていた落とし物の持ち主を探すはずが、当の落とし物をアパート内のどこかに落としてしまい、それを探す道のりの半ばである。


「はぁ、はぁ、はい……。下りなのでまだ何とか。上りがきつうござる」
スイカはゼイゼイハアハアと惜しげもなく大げさに呼吸をした。スイカの息が整うまで、ロシュはその場で待った。待ちながらスイカに尋ねた。


「スイカの部屋って5階だよね? いつも階段どうしてるの?」
「はぁ、はぁ、はふぅ……。バビョーンと跳ねております。先ほど私がしたように、5段分くらいをバビョーンと。落とし物は、バビョーンと跳ねた瞬間にどこかに飛ばしてしまったのでしょう」
「そうか……。そうだ、ずっと聞いてみたかったんだけど。なんでスイカ、5階に住んでるの? 最初に住む部屋を選べなかったの?」
「部屋を選ぶという発想がありませんでした。気づいたら余っている部屋が5階にしかなく」
「そ、そうか……」
ロシュはそれ以上何も言えなくなったのか、黙った。

 

アパート星にはアパートしかないが、そのアパートは特に豪華でも最先端でも何でもなかった。
エレベーターもエスカレーターもリフトもなく、住人は、アパートの建物内にある内階段でひたすら上下するのみだ。
そんなアパートの階段で、ようやく息が整い始めたスイカが言った。


「ハッ、もしや見逃しましたかね? 私が落とした場所は階段のどこかだと思うのですが、今までに見ていない気がいたします……何しろわたくし、ゼイゼイハアハア言いすぎましたもので」
「僕も見なかったと思う。ちょっと待って、サーチしてみる」
ロシュはそう言うと、みずからの機能を使った。


「温度センサー」
その言葉と同時に、ロシュの両目に、水面にできた波紋のような色の波が一瞬広がり、消えた。


「うーん……。僕の機能でもよくわからないな。その手袋がどういう素材でできてるかわからないから、温度センサーでパッと見てみただけだけど。この階段と踊り場、その先の廊下付近には特にそれっぽい反応がないね」
「そうですか……では、どこに落としたのでしょうか……」
スイカが、己に問うかのように、疑問をぽつりと空中に放った。
放たれた疑問は、そのまま空中にとどまった。ロシュもスイカも黙ったままその場に立ちすくんだ。

 

ロシュがやがて言った。
「誰かが拾ったのかもしれないね。クイちゃんには聞いた?」
「クイスさんにはまだお聞きしていません。手袋の形状から言って、ロシュさんかレファラさんの持ち物だろうと思ったもので」
「じゃあ、聞いてみようか。えーと……クイちゃん、先週からちょっとゴタゴタしてるんだけど」
「クイスさん、お忙しいのでしょうか?」
「あ、忙しいわけじゃなくて……いや、忙しいのかな。僕には何とも言えないんだけど、ちょっと夢中になってることがあって……でももうそろそろ大丈夫かな、聞いてみよう。僕もクイちゃんと話がしたいし」
ロシュはスイカにうなずいてみせると、軽やかに階段を駆け下りた。

 

(アパート編「手袋」5話につづく)