スイカごっこ

スイカとしてゴロゴロ転がる会

アパート編「手袋」3話(全15話)

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(登場キャラクター↓)

登場キャラクター、サリー、クイス、ロシュ、レファラ、スイカ

 

アパート編「手袋」3話(全15話)

301号室

301号室


スイカは、2階のクイスの部屋を飛ばして、3階にあるロシュの部屋の前に来ていた。
『落とし物の形からいってもロシュかレファラの持ち物だろう』というサリーの考えに納得したためでもあったが、スイカの考えでもあった。


クイスは、先祖がキツツキである。
手のように見える部分が翼である。
落とし物とは大きさが合いそうもなかった。『翼を覆える手袋であれば、もっと大きくないと用が足りないだろう』スイカはそう考えたのだった。

 

「はぁ、はぁ。そんなわけで、ロシュさんのお部屋に伺いました。こちらの手袋、ロシュさんの物ではありませんか?」
3階のロシュの部屋の玄関先で、息切れ気味にスイカがロシュに尋ねた。
「どれ?」
ロシュが不思議そうな顔をした。

スイカは何も持っていなかった。

 

ここに至るまで、スイカは超能力で棒に刺さった落し物をプルプルと持ち運んでいた。そのはずだった。

スイカは、ロシュに指摘されて初めて、自分が何も持っていないことに気づいた。

 

「しばしお待ち下され。今ですね、手袋をご用意……ハァッ!!」
ずっと超能力で落とし物を支え、持ち運んでいたスイカの集中力が、早くも切れはじめていた。
「はぁ、はぁ……。こ、こちらです。見ていただきたい手袋は……」
そう言ったスイカが、超能力でプルプルとロシュの目の前に差しだしたものは、棒だけだった。
「棒だけなんだけど……」

 

「ああっ! しまった、私としたことが、落とし物をさらに落としてしまいました! なんということでしょう!」
「落ち着いてスイカ。僕も一緒に探してあげるから」
「で、ですがロシュさん、いつものようにお忙しいのでは、鉱石を掘りに行くのでは」
涙目になったスイカが尋ねた。
「どこに掘りに行くんだい? このアパート星にはアパートしかないのに」
憂鬱そうな目をして、ロシュは言った。

 

ロシュはロボットだ。

しかし、ロボットだから表情がない、というわけではない。
ロボットとはいえ、ロシュに搭載された電子的な回路や演算機能は、感情のようなものを理解し、表現することができた。
憂鬱そうに見える目をしているのなら、憂鬱を表現したくてそういう目をしているのだ。

 

ロシュはこのアパート星が気にくわないようだ。なぜならアパート星にはアパートしかないからだ。
ロシュが作られた本来の目的、鉱石を掘ることもできない。なぜならアパート星にはアパートしかないからだ。鉱山も当然ない。
ロシュが言いたいことは、だいたいそういうことのようだ。


「それもそうでございました。で、では、今わたくしが来た道を辿ってみましょう」
スイカはロシュとともに、落とした落とし物を探すことにした。

 

(アパート編「手袋」4話につづく)