スイカごっこ

スイカとしてゴロゴロ転がる会

アパート編「手袋」1話(全15話)

(登場キャラクター紹介)

登場キャラクター、サリー、クイス、ロシュ、レファラ、スイカ

 

アパート編「手袋」1話(全15話)

アパート星

 

ここはアパート星。


アパート星にはアパートが一軒建っているのみ。


アパートは6階建てで、部屋の数は全部で6室。1つの階には1室しかない。


「もうちょっと効率よく建物を建てられなかったのか……」と誰でもだいたいツッコみたくるものの、効率よく建物を立てたところで誰も使うものはいない。

今、アパート星のアパートに住んでいる5名の住人を除いては。

 

「住人」と言っても、アパートに住んでいる者の中に人間はいないのだが、ほかに言いようもない。人ではない住人が5名ほど。それがこの小さなアパート星の全住人だった。

そんなアパート星のアパートの前の地面に何かが落ちていることに最初に気づいたのは、501号室のスイカだった。

 

「何か落ちておりませぬか」
そのスイカの言葉に、サリーが答えた。
「ん? なんだあれ? 手袋かな?」
散歩の帰りだったサリーとスイカは、アパートの真ん前の道で落とし物を眺めながら、しばし黙りこんだ。

 

アパート星にはアパートしかない。交番もしくはポリスステーションがない。
アパート星にはアパートしかない。通りすがりの者などいない。誰かの持ち物だとしたら、アパートの住人のものだろう。
落とし物を眺めながら、サリーとスイカはそう考えた。

 

「どなたの物でしょうか? 今からわたくし、ひとっ走りして、アパートの住人全員に聞き込みをしてまいりましょうぞ」
そんな謎のやる気を出したスイカを、サリーは止めた。


「めんどくさくね? ここに置いときゃ持ち主が気づいて持ち帰るんじゃねえか?」
「むう……なるほど。それも一理あります」
「お、棒が落ちてた。これにぶっ刺して地面にぶっ刺しとけばいいだろ」
そこら辺に落ちていた謎の棒きれを拾いながら、サリーが言った。
「ぶっ刺しすぎではないでしょうか……あッお待ちを! 私がやります! 第一発見者としての責務を果たしましょう!」

 

スイカなので手足はないが、スイカは超能力が使えた。
「ふぬぉぅっ……!!」
スイカはものすごい表情になりつつ、『さいこきねしす』を発動して、地面に落ちていた落とし物を浮かせ、棒に固定した。
そして落とし物つきのその棒を、引き続き超能力で地面に刺した。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ……。やりました! これで落とし物も無事持ち主の元に戻れましょう!」
「お疲れさん。俺がやりゃ一瞬だったのにわざわざ超能力使うとか、ようやるわ……」
サリーが呆れ気味に言った。
その後することもなく、サリーとスイカはアパートに戻った。
なにしろアパート星にはアパートしかないからだ。ほかに行く場所などない。

 

それから一週間。
棒に刺さった落とし物は、今もなお、棒に刺さったままアパートの前にたたずんでいた。
何かの墓標のようになった落とし物を見て、スイカはいたたまれぬ気持ちになった。


「落とし物……! 私が持ち主を見つけてあげましょう!」
なぜか涙を流しながら、そう心に誓った。心に誓っただけでなく声にも出していたが、なにしろアパート星にはアパートしかない。不審に思う通りすがりの者などいなかった。アパートの住人は今、全員部屋の中にいるようだ。


スイカはアパートの住人に聞きこみをはじめることにした。

 

(アパート編2話につづく)