スイカごっこ

スイカとしてゴロゴロ転がる会

ハマり編1話

ひゅるるるるるる…。

どっすんどっかんバリバリバリ!

 

いろいろあってスイカが落ちてまいりました。

 

西暦3020年12月27日、辺境の星にて。

 

 

パタム。サリーは日記帳を閉じた。

 

「今日の日記終わり?」

スイカはサリーに聞いた。

 

「うっさい、俺の日記に口を出すな」

サリーが仏頂面で答えた。

 

「日記書き終わったんなら助けてくれませんかね」

「どうしよっかな~。俺スイカって食べたことねえし、一回食べてみたいかもなあ」

「まずいですよ私。悶絶するほどまずいです」

「なんで自分がまずいことを知ってるんだという」

「助けてくださいよぉサリーさん」

「な」

 

なぜ俺の名を、と言おうとしてサリーも気づいた。日記帳の表紙に書いてあった。

 

f:id:suika-greenred:20181225185548j:plain

サリーの日記帳

 

 

「しまった、おかんが書いた表紙の文字そのままにしてた。日記なんてふだん書かないから忘れてた」

おお、なんという説明口調。しかしスイカはそこをスルーした。

 

「ふだん日記なんて書かないのになぜ今書くのです!」

「俺の勝手だろうがよ!」

「チッわんこが…」

「おい今何つった。ワン何とか?」

「わんこ」

「俺はわんこじゃねえ。イヌじゃねえ」

 

f:id:suika-greenred:20181225185719j:plain

ちなみに彼の見た目。

 

「確かに絵がイヌには見えない」

「いや絵のうまいヘタじゃなくて俺はイヌじゃないの。2足歩行だし、しゃべるし。つうかメタい」

「見た目イヌとしか」

「そういうオマエは何だ」

 

f:id:suika-greenred:20181225222900j:plain

「スイカです、よろしく」

 

「いやスイカじゃないだろオマエ、なんかうごめいてるし、しゃべってるし」

「スイカだと言ったらスイカです!」

「オマエ1人で動けるんじゃね? なんかうごめいてるんだから、その動きを応用してそこから1人で飛びだしてみなさい」

「飛びだしたら食べるんでしょう」

「あん?」

「飛びだしたら私を食べるんでしょう!」

 

スイカは泣き散らかしながらサリーに迫った。迫ったといっても、今の状況ではハマってしまっていて、動けないままだった。

 

助けてくださいと言ってみたり、飛びだしたら私を食べるんでしょう、などと言ってみたり。

「オマエ絶対ノリだけでしゃべってるだろ……」

言っている内容を深く考える必要などない、ノリだけノリノリスイカだった。

 

f:id:suika-greenred:20181225185844j:plain

ちなみに今の状況

 

スイカが、サリーの家の屋上にどこからともなく落ちてきた。なぜか割れもしなかったスイカは、落ちてきた勢いで、屋上に設置してあった格子状のものに半分ほどめり込んだ。音に驚いたサリーが屋上に来て、しゃべりうごめくスイカの突然の来訪を発見し、驚き、これ見よがしにことさら日記にしたためた。

 

「これが今までのあらすじです」

「誰に説明してるんだ」

「そこんとこはお互い様です」

 

スイカはおなか辺りで、いやスイカのおなかってどこだというアレは置いておいて、そこら辺からがっぷり格子状のものにハマり、動けない状態になったまま言った。涙はすでに渇いていた。

涙って……どこから出てるんだよ、成分何だよ、と、ひとしきり小声でツッコミを入れたあと、サリーは言った。

 

「まあいいけどよ……じゃあちょっくら待ってろ」

「何をする気なのよサリー」

「オマエは口調を統一しろ」

「嫌です!」

 

何なのその意固地っぷり……とぶつぶつ言いながら、サリーはスイカがうずもれている格子状のものに近づき、壊れていないかチェックした。

 

「大丈夫そうだな。しかし格子が変形してるのにオマエは無傷って……」

「そういうこともありますよね」

「ねえよ」

 

つうかこの状況自体がねえよ普通、と言いながら、サリーは工具ベルトに入った端末から、何かのスイッチを入れた。

 

「ところで私がハマってるこの四角いアミアミ何?」

「あー。水まき機。スプリンクラーだな、格子スプリンクラー。乾季になると砂ボコリがひどいんで設置してみた」

 

水がかかるのを避けるためにスイカの下まで移動しながらサリーが説明した。

ここからではスイカのお尻しか見えない。

 

f:id:suika-greenred:20181225190819j:plain

 

「尻しか見えない」

思わずつぶやくほど尻だった。

 

「スイカの尻って何ですか」

「知らん、何か尻っぽく見えたから言ってみた」

 

「このプールに水が溜まるようになってるから。そうすりゃ出られるだろ、オマエも」

「ほうほう、それはありがたい」

「んで、そこから出ても食べたりしねえから。つうかよー、うまいとかマズイ以前に、会話が成立しちゃったやつを食べるって、難易度高いだろ。食えねえべ普通」

 

「さあ……わたくしスイカ、食べられる側専門なもので、食べる側の意見はよくわかりませぬ」

「ああそう……。水とか空気とか窒素とかリンとかカリウムとかは、食べるとは言わないのか?」

「表現の仕方が違うだけ問題のような気がしてきました」

「あ~」

 

……………

………

……

 

「いつ出られるんですかこれ」

「さあ……何しろスプリンクラーだからなあ……まあ、そのうち水も溜まるだろ」

スイカの尻方向からサリーが言った。

 

f:id:suika-greenred:20181225223301j:plain

半透明プール。モードを切り替えると塀や屋根にもなる多機能半透明。

 

いつ出られるのだろう、いつ、私はいつ……。

 

と思いながらスイカは空を見上げた。夕焼け空だった。辺境の星の太陽が沈む。

 

「この太陽って人工太陽なんですよね、うまいことできてますよね」

「ああ。ヒトが作ったわけではないから人工と言っていいのかどうかわからんけど」

「太陽系から出てもまだ太陽系の常識を引きずっているってのがアレですよね、私たち」

「だよなあ。古臭いよなあ。俺たちはもう、太陽なんてなくても生きてはいけるのになあ」

「なのに何かやっぱり太陽なんですよね」

「それな、ないと落ちつかないっていうな」

 

太陽系の惑星で発生した生き物が太陽系を飛び出し、ほかの惑星に移り住む、そんな時代だった。その結果、もともとその星に住んでいた、太陽系惑星以外の星出身の生物とのいさかいが起きたりしているのだが、それはまた別のお話。

 

自分たちの身に潜む、理由の分からぬ太陽への執着を、自虐気味に笑うスイカとサリーだった。

 

f:id:suika-greenred:20181225191252j:plain

 

模造太陽は沈みゆく。

 

尻方面からの声と会話してみたスイカだが、その会話のネタが早くも尽きかけていた。初対面なのでこんなものだろうとスイカは思った。

そしてスイカとサリーは無言になりながら、オレンジ色の模造太陽をぼんやり眺めた。

 

f:id:suika-greenred:20181225191328j:plain

 

……。 

 

何なんだろうこの時間……。

 

 

(ハマり編2話へつづく)